地獄の獣よ狂気の無垢を

タイトルは仰々しいけど、何となしに日々の雑感をダダ漏れ中です。

深夜の港、そして4号線ケオティック

 

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今でもそうだが、仙台の会社で働いていた時分、深夜や明け方の帰宅が多かった。
帰宅のその時間まで営業しているお店は吉野家びっくりドンキーくらい。
あとはそう、南仙台にある『万代書店』。
それらを当時の僕は「港」と呼んでた。

万代書店という店は、ドン・キホーテの拡大解釈と言えばいいのかなんなのか。
説明に苦慮しますが、CD・レコード・DVD・ビデオ・TVゲーム・古本・古着・楽器・釣具・フィギア・ブランド品・指輪・ゲーセンなどがひとつのフロアに混在しているケオティックなお店。
当然、深夜に訪れる客もケオティック。
未来の犯罪者、もしくは数年経てば一家のよきパパ・ママとなるような予備軍の層だ。

上下とも(クラッシャー・バンバン・ビガロみたいな)真赤な炎が燃え盛るデザインが施してある黒のジャージ、歩くたびにピッタンピッタンと音が鳴るサンダル、金の細い鎖のネックレスのようなものを首から下げ、グラデーションがかった茶色のサングラス越しに、レコードコーナーの棚の中から70年代歌謡曲と70年代ディスコのレコードをサクサク選んでいる僕を訝しげに見ている。レコードを選んでる姿が奇異に見えたんだろうか。
その男の隣には彼女と思しき女がM字開脚しながら古本のコミックを読んでいる。すすけた水色のトレーナー(胸にPIKOのロゴが)にジーンズのホットパンツ。
もちろん髪の毛の色は茶。デフォルトです。工場出荷時どおりです。

港と呼ぶだけあって、びっくりドンキーには帰りによく行ったですよ。
深夜なので客はまばらで、テーブルの仕切り越しにそのカップルの客たちの会話が聞こうと思ってなくても大きな声なのでこちらにも届く。
「なあ、今がら新港行がねが?」
「おめえ、まだエロいごど考えてっぺ?」
「オレやあ、オメエの口でねえどイゲねえんだ」
「バガくせ。オメエやあ、ちゃんとあそこビオレしたが?」
「あぁ?してね」
「ビオレしてこいっ、このっ!」
そんな会話を聞きつつ、ポテトチップ味のするレギュラーバーグディッシュを頬張りながら島田雅彦の「愛のメエルシュトレエム」を読む。途中何度も眠くなる。

悲喜こごごもの4号線バイパス、名取のびっくりドンキー、長町のびっくりドンキー…。
深夜の港にはいろんな船が停泊し、様々な想いが漂着する。当然僕もその中のひとつだ。

目を覚ませば旅がはじまる

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たまに町全体がナポリタン臭い町がある。
ずいぶん昔、青森のどこかの駅に降り立った時には干物の臭いが充満していた。それはわかるというか、ある意味納得できるんだけどナポリタンってなんなんだ。

僕は昔から夜眠らない子供だったので、電車でまったく知らない土地まで寝過ごしてしまった経験がたくさんある。
たくさんありすぎてそれはもう自分の中では「寝過ごしてしまった」という気分にならない。
電車の中で起きて車窓に未知の風景が映っていたら「今日はどんなところに来たのかな」と思うようにしていた。
いちいち落胆していたら気が滅入るので楽観的に「ほぉ、段々畑じゃないですか」とか「蔵王の山々がキレイだなあ」(蔵王だと思っていたら実は安達太良山とか磐梯山だった、という時も)と呑気に車窓を眺め、気に入った風景だったらそのままどこまでも電車に乗っていたりした。
まさに、ぶらり途中下車の旅

そして飽きたら降りる。
正確に言うとホームから見る風景がよければ、もしくはホームに時間を潰せるアイテム(自販、ベンチ、トイレ)があれば降ります。
散歩するにはいい町だ、と思っても自分の立場としてはあくまで寝て乗り過ごした身。
改札を出て「ちょっとその辺を」と言うわけにはいかない。
ずっとホームで帰りの電車を待っていなければならない。
でも田舎の駅によっては「次の電車までまだずいぶん時間があるから、その辺ブラブラしてきたらどう?なにもないけど」みたいなことを言われることもある。
そんなときはお言葉に甘えて町に繰り出す。

商店街さえない町もある。県境あたりの駅ならそれがデフォルト。それが県境クオリティ。

よくわからない駅前開発をしている町もある。
駅前に2階建てのスーパー、その真向かいには半円型の体育館みたいな本屋。さっぱりクルマの往来がない駅前ロータリー。無駄に広いロータリーなので、地元のヤンキーのクルマが意味なくグルグルとロータリーをまわってる。たまにドリフトっぽいこともしながら。それ以外はあたり一面田んぼ。
殺伐としながらも、開発したばっかりなので道の舗装などは新しい。
(このニュアンスをどう伝えればいいか。言葉で説明すると東京の郊外とほぼニュアンスが同じだが、絶対にサバービアなんて言えないような、決定的にシリアスさに欠ける風景)

閑話休題
こうして帰りの電車の時間が来て、いそいそと乗り込むわけですが、帰りは帰りで楽しみがある。
それは乗ってくる人たちの観察。
敢えて大袈裟に言うと、違う土地の人は違う文化圏の人たち。
ボックス席に陣取った四人組のホッペの赤い女子高生たちが、まわりを気にせず大声で猥談に興じて高笑いしている姿などは、見ていて面白い。

そんな偶然という名の居眠りから始まる、ぶらり途中下車の旅
気の長い人以外、おすすめなんて一切しません。

 

孤独を語る、夜のハンティング

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以前、といってもだいぶ前ですが、とある酒場にて僕と当時のバイト仲間数人とでバイトが終わった後、よく飲みに行ってたんです。仕事終えた後、フラッと軽く飲みに行くっていうのが僕らの間の常でした。
僕はその頃から飲めなかったんだけど、カクテルくらいは飲めるのでよく行ったものです。
当時の話題は「バイトでこんなことがあった」とか「あの客の対応はいかがなものか」とか「あの女の子はかわいい」とか。
まあ、ボンヤリした男達の飲みでした。

いつものようにバイトが終わった深夜、僕らはぞろぞろといつもの店に行き、特に話すこともないので、お互いの童貞喪失のエピソードを妙にしんみりと語り合ったりしていたところ、僕は隣のテーブルに座った男女の話し声が妙に気になって聞き耳を立てていました。

「……おれが思うにね、孤独っていうのは生きる何かを得るためのいいチャンスだと思っているんだ。逆に孤独を知らないと枝のない木のようになっちゃうんじゃないかな」
「あたしもその意見に賛成だな……。あたしもよくわかってないけど、人生っていうか生きるっていうのは……」

わあなんだなんだ、このご時世に。一体なんなんだ、と。

「大切なのは子供達の視点に立ったクリエイティビティが必要だってことなんじゃないのかな。みんな忘れてしまいがちだけど、おれは持っていたい。いつも戦ってるんだよね。孤独な戦いを」
「素敵だと思う…うん。とても」

その後もその男女は互いの孤独感を語らい、女は男の言うことに必要以上に「うん。わかる。わかるなあ……」と頷き、僕は苦虫を噛む思いで、自分の初体験エピソードを赤裸々に且つウェットに語っていました。
トイレに立つ時、隣のテーブルに座っている男女の顔を見てみようと思い、席を立ち視線を隣のテーブルに移すと……。
『この女の子、メチャクチャかわいいじゃないか……(男はそんなんでもないけど)』

その男女は僕らが帰るよりも先に帰っていき、僕は会計を済ませドアから出ていく彼女を見ながら「女の子さん。キミはそんなに可愛らしいのに、そんな男のロジックに酔ってしまうのだね……。きっとキミのその愛らしい肢体もあの男の手によって……。女の子さん……」と、目から光線が出るくらい見つめていました。
さて一方、自分たちのテーブルに目を移すと、バイト仲間の中の最年少者であるサクライくんの「童貞喪失後の初めての朝は、世界が黄色くみえました」発言に皆絶句。
「サクライくん、なんで黄色だったの?」
「わかんないっすけど黄色かったっす」

みんな外に出た後、収まりのつかない僕は「今日はもう一軒だ。かわいい女子と孤独についてみんな考えよう」との提案にみんな「はてな?」という顔だったのに対し、サクライくんだけが「村上さんについて行きますぅ」とグダグダに酔っぱらいながら応えてくれました。彼、いい奴だったなあ。大学には受かったのかなあ。落ちただろうなあ。

深夜2時、渋谷のポン引きと。

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以前といってももう数年前の話ですが、仕事で一緒だった人と渋谷のスポーツバーでサッカーを見た後、何もすることがなく深夜の2時頃、渋谷百軒店のラブホ街あたりをブラブラしていたら、髪の長い若いポン引きに話しかけられました。
今日はお客さん少なくて大変なんでぜひ遊んでいって下さい、と結構しつこかったんで振り切ろうと思っていたら、一緒にいた人がポン引きに
「なんか暇そうだね、今日そんなに客いないんだ?」
と話を振ってみたのです。
ポン引きも暇そうだったし、何よりこっちが暇を持て余していたので、店入るとかは置いといて、とりあえず喋ってみようかみたいな感じでダラダラと話し始めました。
ポン引きも営業トークからこっちの話につられたのか、徐々に雑談モードへ。

いつもここに立って仕事してるの?
「そうです、だいたいこの仕事始めて一年経つかなあ」
年齢は?
「四捨五入して30くらいです。お客さんたち、音楽かなんかやってるんですか?」
いや、やってないよ。
「そうなんですか、でもライブとか行ってそうな感じですよね」
いやーライブっていうか、まあ昨日perfumeのライブのチケット取れたから今度行こうかと思ってるくらいで。
「えー。すごいじゃないですか。あっ、アイドル好きなんですか?」
そんなに目立って応援してるとかはないんだけど、興味はある。
「いやー実は僕、仕事で稼いだ金、全部アイドルにつぎ込んでるんですよ」
え?

聞けばそのポン引き、というかアイドルヲタ、今は雑多にいろんなアイドルを追ってるということらしいが、もともとは初期の頃からのミキティこと藤本美貴ヲタだったという。

ってことは、もしやヲタ芸とかああいうのの……。
「ああ、ヲタ芸とか一番最初にやりだしたの僕らかもしれないですね」
おおおおっ!美貴様美貴様お仕置きキボンヌ!

一応、諸説はいろいろあるんですが、ヲタ芸の元祖はミキティのライブでヲタたちによって作り上げられた、ってのがよく知られてる話なのです。
それでそのままミキティのヲタと、っていうかポン引きと話が盛り上がり、結局2時間近く立ち話をして、途中缶コーヒーとか奢ってあげたりして最後は「いやー今日は売り上げ的にはさっぱりでしたけど、すごく楽しい日でした。ありがとうございました」と感謝されながら別れました。


まさにその場所だったんですよ。
それからしばらく経ち、子供がいるんで迎えに行ってから警察に出向くと言いつつ失踪したアイドルの事件の現場が。
ま、こっちは警察からの「お仕置きキボンヌ」じゃなかったんですけど。

皇居に恋して

東京に来て感動したことのひとつに皇居がある。
中に入ったとかではないけど、あのオフィス街の街並みの中、ガラリと雰囲気の異なる空気を醸し出すあの姿。
悠然とした佇まいというのは、まさにこのことなのではないかと思うほど。

ああいうものは故郷の東北にはない。まさに東京という感じがする。

吹きすさぶ深夜のオオカミ

今夜は風が強い夜です。
外では強風が木々を揺らつかせる音、近隣のマンションの風を切る音などが聞こえます。
気のせいか僕が住んでいるマンションの建物自体、若干、風で揺れているような。

こんな風が吹く度、マンション風で飛んだりしないのかなと思うけど、風で家飛んだなんて聞いたことないよな、三匹の子ぶたじゃあるまいし。

昔住んでいた下高井戸の木造アパート、だいたい築40年くらいだったと思うけど、あそこは自然災害があるたび、ヤバイ潰れる!と不安に襲われていました。特にあのアパート、地震に対しては過敏に揺れていたっけ。

ある夜地震で部屋がグラグラと大きく揺れ、ターンテーブルとミキサーが落ちそうになるのを慌てて押さえ「これは震度5強クラスだ!」と焦りながら急いでテレビをつけて震度を確認したら、震度3だったり。

そういえば自然災害以外にもあのアパート、揺れてたっけ。
2階建てのアパートだったんだけど、僕は1階に住んでいて僕の部屋の真上には若い男が住んでいたんです。その男、深夜になるといつも大きめの音でハウスをよく流していたんですが、必ず踊るんですよね。いや実際見たことはないけど、たぶん踊ってるんです。ステップとか踏んでるし、部屋で。縦横無尽に移動しながら踊ってるのが下の俺にもわかるくらい。
そうすると古いアパートだから、建物自体がかなり揺れるんです。ドリフの長屋のコントみたいですが。
そんなことしてたら他の部屋から苦情とか出そうなもんだけど、僕があのアパート出るまで上の部屋のダンスは続いていたから、誰も注意しなかったんだろうなあ。でも僕も苦情を言ったことはないです。
というのも、僕だって夜中にまあまあな音でターンテーブルまわしていたし、隣の部屋の人も昼夜問わず大声を出していたし、まあ各々迷惑なことを好きにやっていたので、人のこと言えない立場だったのです。

ハウスで踊ってる上の男に対しても、全然嫌な感情を持ったことはないし迷惑だなと思ったこともないし。むしろライブ感があって楽しかったくらい。

踊る時間帯もだいたい決まってて、たいてい深夜2時くらいだったんだけど、ある日の深夜も同じくまた揺れだしたので「始まったか」と気にも留めていなかったんですが、その日はどうもリズムが違うのでした。
「…あれ、今日は単調なステップなんじゃない?」
ドン ドン ドン。
「…」
ドン ドン ドン ドンドンドン。
「ピッチが早くなったな」
ンドドドドドドドドドドドドド!
「…!? こ、これは…。これはダンスじゃねえ!セックスだ!! 今日はセックスしてる!!」
シーン。
「あ、イッたんだ」

まあいい思い出です。

健康的で病的なミッキーマウス

子供の頃からミッキーマウスがどうも好きになれなかった。
大人になった今でも、好感が湧かない。
ディズニーランドも一度行ったが、元来ミッキーやディズニーキャラクターに愛着がないので「ああ、なんかいるな」くらいにしか思わなかった。

女子高生なんかは必ずと言っていいくらい、カバンとかにディズニーキャラクターをぶら下げている。
あれがどうも解せない。
本当にカワイイと思っているのかな。

ディズニーストアなんかに行くと女の子が「かわいー」「みてみて、これも欲しー」と連呼している。
いやまったく本当に不思議。

ミッキーマウスに惹かれない理由は自分でもよくわからない。単純に好き嫌いの問題だと思うが、見ていて引っかかるものが何もないからだと思う。
例えばキャラクターでいえば僕はチェブラーシカとかが好きなのだが、チェブラーシカは見ていて“寂しさ”だったり“実存的”であったりと、通底したある暗さがある。ストーリー自体も共産圏独特の侘びしさだったり、非装飾的なというかポップの欠片もないあのどんよりとした映像も惹かれる要因のひとつだ。

ミッキーの場合、ポップなんだけどそこにワビサビみたいなものがない。歴史を持たない国アメリカを体現しているかのような印象すらある。
思えばアメリカ自体が病的な明るさを持っていると言えなくもない。
例えばアメリカのエロ本、あれにアメリカそのものが映しだされていると思うんだけど、よくあるアメリカのエログラビアのシチュエーションでこういうのがある。
『燦々と降り注ぐ太陽。見渡す限りの真っ青な青空のもと、公園で白人女性が全裸で犬の散歩』
これが僕にとってのアメリカ。
僕の中ではミッキーマウスもこのライン上にいる。