地獄の獣よ狂気の無垢を

タイトルは仰々しいけど、何となしに日々の雑感をダダ漏れ中です。

孤独を語る、夜のハンティング

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以前、といってもだいぶ前ですが、とある酒場にて僕と当時のバイト仲間数人とでバイトが終わった後、よく飲みに行ってたんです。仕事終えた後、フラッと軽く飲みに行くっていうのが僕らの間の常でした。
僕はその頃から飲めなかったんだけど、カクテルくらいは飲めるのでよく行ったものです。
当時の話題は「バイトでこんなことがあった」とか「あの客の対応はいかがなものか」とか「あの女の子はかわいい」とか。
まあ、ボンヤリした男達の飲みでした。

いつものようにバイトが終わった深夜、僕らはぞろぞろといつもの店に行き、特に話すこともないので、お互いの童貞喪失のエピソードを妙にしんみりと語り合ったりしていたところ、僕は隣のテーブルに座った男女の話し声が妙に気になって聞き耳を立てていました。

「……おれが思うにね、孤独っていうのは生きる何かを得るためのいいチャンスだと思っているんだ。逆に孤独を知らないと枝のない木のようになっちゃうんじゃないかな」
「あたしもその意見に賛成だな……。あたしもよくわかってないけど、人生っていうか生きるっていうのは……」

わあなんだなんだ、このご時世に。一体なんなんだ、と。

「大切なのは子供達の視点に立ったクリエイティビティが必要だってことなんじゃないのかな。みんな忘れてしまいがちだけど、おれは持っていたい。いつも戦ってるんだよね。孤独な戦いを」
「素敵だと思う…うん。とても」

その後もその男女は互いの孤独感を語らい、女は男の言うことに必要以上に「うん。わかる。わかるなあ……」と頷き、僕は苦虫を噛む思いで、自分の初体験エピソードを赤裸々に且つウェットに語っていました。
トイレに立つ時、隣のテーブルに座っている男女の顔を見てみようと思い、席を立ち視線を隣のテーブルに移すと……。
『この女の子、メチャクチャかわいいじゃないか……(男はそんなんでもないけど)』

その男女は僕らが帰るよりも先に帰っていき、僕は会計を済ませドアから出ていく彼女を見ながら「女の子さん。キミはそんなに可愛らしいのに、そんな男のロジックに酔ってしまうのだね……。きっとキミのその愛らしい肢体もあの男の手によって……。女の子さん……」と、目から光線が出るくらい見つめていました。
さて一方、自分たちのテーブルに目を移すと、バイト仲間の中の最年少者であるサクライくんの「童貞喪失後の初めての朝は、世界が黄色くみえました」発言に皆絶句。
「サクライくん、なんで黄色だったの?」
「わかんないっすけど黄色かったっす」

みんな外に出た後、収まりのつかない僕は「今日はもう一軒だ。かわいい女子と孤独についてみんな考えよう」との提案にみんな「はてな?」という顔だったのに対し、サクライくんだけが「村上さんについて行きますぅ」とグダグダに酔っぱらいながら応えてくれました。彼、いい奴だったなあ。大学には受かったのかなあ。落ちただろうなあ。